先進企業のDX その裏にある「現場に寄り添う」姿勢とは
GAテクノロジーズの稲本氏(写真奥)とブリヂストンの花塚氏 デジタルトランスフォーメーション(DX)における先進的な取り組みが注目されるブリヂストンとGAテクノロジーズの担当者による対談後編。DXを一層、推進していくうえで今後、乗り越えるべき課題について話題は広がっていく。 納得感持って受け入れてもらう 経済産業省情報技術利用促進課 宮本祐輔課長補佐 前回のお話では、経営戦略としてのDXの推進のカギは、現場との距離感や組織の壁を越えた緊密な連携にあるように感じました。実際には、ご苦労もあったのでは。 ブリヂストンデジタルソリューション企画本部花塚泰史デジタルAI企画部長 データの利活用へ向けた環境整備は課題のひとつです。私の部署には、データサイエンティストなど専門人材を抱えるため、社内のさまざまな部門から分析や解析依頼が寄せられます。問題は数多くのデータが蓄積されてきてはいるものの、それらを分析するための前処理、いわゆるデータクレンジングに多くの工数を要することです。例えば一本のタイヤのデータをトレースするために複数のIDを紐づける必要があるなどです。顧客や製品情報が紙で管理されているケースもあります。しかし、DXの名の下に、これまでのやり方を一方的に見直すよう迫ることがあってはいけないと肝に銘じています。現場にはそれぞれ慣れ親しんだ手法がある。デジタル化によってどんなメリットがあるのか納得してもらう努力を重ねなければ納得感を持って受け入れてもらうことはできません。 GAテクノロジーズ稲本浩久Chief AI Officer(最高AI責任者) 全く同感です。私自身はDXに対する技術的、心理的な「ハードル」を下げることと、必要性に対する「意識の差」を埋める。この二つを重視しています。正直に言えば、「このやり方の方が便利なのに、何で使わないんだ」と思ったことはありますよ。でも使ってもらえないのなら、受容してもらえない理由は何か、ビジネスの実態はどうなっているのかまで踏み込み議論を重ね、現場が許容できるシステムを開発する。これからのDXでは、現場に寄り添う開発側の姿勢が一層求められると感じています。
2020.12.15