DX時代のスポーツ資金循環の創出:スポーツとエンタメと公益をつなぐには
スポーツ競技としての「ケイリン」の国際ルールに則した250m周長の木製バンクと、約2,000席の観客席を備えた「TIPSTAR DOME CHIBA」。最新の音響照明設備、次世代の映像・レーザー照明等を活用した会場演出で従来の競輪のイメージを一新する。 スポーツ産業は企業にとっても新たな事業の柱になる可能性を秘めている。高速大容量通信などテクノロジーの発達がスポーツの楽しみ方を変え、新たなサービスが続々と登場し始めている。デジタルを活用することで収益化できたり、効率化できたりする既存の領域も少なくない。このDX時代に、スポーツ産業をどのようにコンテンツ・データ産業へと変貌させ、スポーツの「稼ぐ力」を高めるか。民間企業の取り組みからヒントが見えてくる。 「競輪」を変えたアプリ 「競輪」と聞けば高齢の男性に支持されている公営競技という印象だろう。 そうした競輪のイメージを変えつつあるのが、ミクシィの取り組みだ。2020年6月に開始したスマートフォンのアプリ「TIPSTAR(ティップスター)」は、アイドルやお笑い芸人が毎日競輪を話題にライブ配信して予想するなど、楽しみを共有できる。利用者の3割が女性で、20ー30代が多い。 ミクシィの木村弘毅社長は「スポーツは他のライブエンターテイメントと比べても観客と選手の共感が生まれやすい」と語る(写真は「TIPSTAR」)。 SNS「mixi」やスマホゲームの「モンスターストライク」で成功を収めた同社がなぜスポーツに着目したのか。キーワードはエンタメとコミュニケーションだ。 木村弘毅社長は「スポーツは他のライブエンターテイメントと比べても観客と選手の共感が生まれやすい」と語る。 ミクシィの木村弘毅社長 観客が選手の一挙手一投足に注目し、一喜一憂する。この盛り上がりを一時的なものに終わらせない方法はないか。木村社長が世界を見渡した時、魅力的に映ったのがスポーツベッティングだった。つまり、スポーツが持つ唯一無二の体験価値が、スポーツベッティングを介すことで盛り上がりを増すのみならず、新しい商流から大きな資金環流が生まれ、スポーツに、コンテンツ価値の拡大と、社会的意義の拡大をもたらしている。日本国内でベッティングのような仕組みはできないかと考え、競輪事業にたどり着いたのだ。
2021.10.03