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「脳梗塞」治療に光 治療薬候補「TMS-007」とは

2025.10.07

創薬ベンチャーとして薬の研究・開発をしている株式会社ティムス。2011年から従来の脳梗塞治療薬にはない特長を備える新薬候補「TMS-007(ティーエムエスゼロゼロセブン)」の開発を進めている。先日、発明者の蓮見惠司氏が、TMS-007の実用化に向けた研究の進捗と特長について、プレス向けに説明会を行った。

毎年約763万人が脳梗塞を発症

まずは株式会社ティムス 代表取締役 若林拓朗氏が、脳梗塞治療の現状について話した。国内の年間死亡者数4位であり、脳血管疾患治療者の7割を占める「脳梗塞」。脳梗塞は、脳に酸素や栄養を供給する動脈に血栓ができることで血流が悪化し、脳細胞が死滅する病気だ。世界的にみても、毎年約763万人が脳梗塞を発症し、329万人がその影響で命を落としている。一方で、先進国で承認されている脳梗塞治療薬はわずか1つ。さらに、現在使用されている薬は、発症から4.5時間以内に投与しなければならず、患者全体の10%未満にしか使われていないのが現実だという。

TMS-007の可能性

そこで株式会社ティムス 取締役会長で農学博士の蓮見惠司氏が説明をしたのが、開発を進めている新薬候補のTMS-007。過去の臨床試験結果から、従来の薬と比較すると投与可能時間が約3倍の12時間に増加するそう。これにより、医療機関から遠く離れた場所に住む患者へも治療のチャンスが広がる。

さらに、TMS-007は従来の血栓溶解効果に加え、抗炎症作用も有して おり既存の薬の副作用として挙げられている、脳出血リスクを減らすことができる。TMS-007の商品化が進むことで、脳梗塞治療の選択肢が広がり、社会全体に大きな変化がもたらされることが期待される。

蓮見氏によるとTMS-007は、農工大でカビのバイオ液から発見した化合物のひとつ。蓮見氏は、遠藤章博士のもとで探査研究の手ほどきを受け、長い時間をかけて研究を行いました。その中で生まれたのがTMS-007だ。遠藤博士は、高脂血症の薬「スタチン」の発見者であり、このスタチンがきっかけとなって生まれた化合物が「SMTP」(カビの一種であるスタキボトリス・ミクロスポラにより産出される低分子化合物)。

脳梗塞の場合、2次的に脳出血が起きてることがあり、従来の薬(t-PA)では出血重篤度がかえって悪化してしまうというデータがあったそう。SMTPによりこの点が改善され、死亡率だけでなく神経欠損症上(麻痺)も低下させるという。それだけでなく、SMTPは炎症性の病態を抑えるなど脳梗塞に対し、理想的なプロファイルを持っていることもわかった。

TMS-007グローバル試験進行中!

TMS-007の研究は進んでおり、「国内の少数の患者に対する臨床試験」は既に完了。現在はグローバル試験が進行しており、20ヶ国において150以上の施設で実施される予定だ。実施期間の終了は2029年12月。これまで遠方に住んでいて医療機関へのアクセスが困難だった患者や、発症から発見が遅れた場合でも治療が可能になると、期待される。

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