
「男性が育休を取るのは、まだ特別なことなのだろうか?」
そんな問いかけに、明確な“ノー”を示す企業がある。化粧品メーカーの株式会社ナリス化粧品では、男性社員の育児休業取得率が6割を超えている。家族と過ごす時間を大切にする価値観が、社内にしっかりと根付いているだけでなく、その結果、会社にとってもメリットがあるということだ。
直近3年間の平均が60.8%
株式会社ナリス化粧品は、社員が働きやすい環境を整備する中で2024年度の男性社員の育休取得率が60%、2023年度は55.6%、2022年度は66.7%で直近3年間の平均は60.8%となった。

また同期間中の該当する男性社員の取得期間は全員が3か月以上であることもわかった。同社は男女雇用機会均等法が制定された1985年に産休・育休制度を導入。当初から男性には産前休暇は適用されないものの、育児休暇やそれ以外の制度もすべて男女問わず取得できる制度設計だったが、初めて男性の育休取得者が出たのは2007年。男性の育休取得者が増えたのは2016年に「育児・介護両立支援サポート」を開始してからだ。開始時には社員への告知に加え管理職への教育を徹底。育休や介護休暇の経験がない管理職の知識不足や、部署による経験の有無に関係なく希望する社員が前向きに取得できるよう社内の空気感の醸成に努めたという。当社の男性育休取得の該当者は年間10名を下回るため取得率はその年によりばらつく傾向があるが、近年では高い割合で安定し、複数回の取得者や管理職の取得例も増加。直近3年では育休を取得する人が多数派になり、取得期間も全員が3か月以上の長期間だった。
育児経験は製品開発のヒントにも。男性育休取得者増加は会社にとってもメリット
株式会社ナリス化粧品は男性の育休取得は本人や家族だけのメリットではなく、会社にとってもメリットがあると考えている。突発するトラブルに対応する適応力や、出張やフレックス出勤など直接顔を合わせなくてもチームとして仕事を遂行する実行力だけでなく、育児中のママ社員をはじめとした異なる立場の相手を理解・尊重できるという能力面でも本人のコミュニケーション力やマネジメント力の向上につながっていると実感。また、数年前に育休取得した研究開発の男性はおむつ替えの育児経験をヒントに吸水ポリマーに着目し、新しい日焼止めの開発に生かすなど業務に直接活かす事例も出ている。さらに取得後の変化として多くの社員が、育休中だけが育児ではないため業務の生産性を向上させたいという意識が圧倒的に変わると感じているそうだ。
今後の課題として、現在の取得率は高いものの業務内容や部署による取得率のバラツキがあると考え、すべての部署の希望する社員が育休を取得できるよう取り組んでいくということだ。
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