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誰もが不自由なく暮らせる社会を目指して。世界規模で取り組む「SDGs」

2020.08.07

「1.25米ドル」
日本円に換算すると約130円。これは何を表した数字だろうか。サイダー1本あたりの値段? ガソリン1ℓあたりの値段? はたまた遠足のおやつの上限額?

残念ながらどれも違う。驚くかもしれないが、これは「世界の5人に一人が使える一日の生活費」の額だ。主にアフリカ地域を中心にこの「1.25米ドル」で生活を営む人々がおり、実際にはもっと少ない地域もある。私たちが日頃コンビニで買うお茶やコーヒーの値段が誰かの一日の生活費だと考えると、とても心苦しい気持ちにならないだろうか。

お金だけでなく、安全な水を使えない人々や教育を満足に受けられない人々が世界にはまだまだ大勢“残されている”ことも事実。児童労働や人身売買、紛争下で怯えながら毎日を生きる子どもだっている。

こうしたさまざまな世界的な課題を各国が連携して解決し、「『誰一人取り残さない』持続可能で多様性と包摂性のある社会」を目指しているのが、昨今よく耳にするようになった「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標、エスディージーズ)」だ。

テレビやネット、SNSでは毎日のようにSDGsの文字が踊り、商業施設や駅の広告にはSDGsの認知を広げるマークやポスターが並ぶ。最近ではハロー・キティ―と河野太郎外務大臣のコラボ動画「タロー!キティです!【ハローキティSDGs応援 Goal 14】」※1や、PPAPで一世を風靡したピコ太郎の「ピコ太郎 × 外務省(SDGs)~PPAP~」の動画配信※2など、世界的に人気のキャラクターや著名人と協力して認知拡大を進める動きが見られるようになった。

とはいえ、首都圏に住む人を対象にしたアンケートによると、SDGsの認知度は32.9%とまだまだ認知が低いことが現状※3。そこで今回は、少しでもSDGsの認知が広まるよう、また理解が深まるように基礎知識や日本の取り組みなどについて解説していこう。

“誰一人取り残さない”世界を実現させる「SDGs」とは

外務省のホームページに記載された説明においてSDGsは、「2001年に策定された『ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)』の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された『持続可能な開発のための2020アジェンダ』にて記載された2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標」※4とされている。

そもそもMDGsとは、2000年の国連サミットで採択された「国連ミレニアム宣言」を基にまとめたもので、開発途上国(発展途上国)における「極度の貧困と飢餓の撲滅」や「HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止」といった8つの目標を掲げていた。この目標の期限は2015年までとされていたのだが、各国がさまざまな取り組みを行ったことにより2015年を待たずして一定の成果をあげることができた。

2015年最終報告書※5の具体的な数値で言えば、極度の貧困(一日1.25米ドル未満)で暮らす人々の数は、1990年の19億人から8億3,600万人と半数以下まで減少。HIVの感染者数は2000年の350万人(推定)から210万人と約40%の減少に成功した。その他にも衛生設備の整備や初等教育の就学率上昇など、8つの目標のそれぞれで数字の改善が見られた。

一方で、男女間の賃金の差や感染症に対する正しい知識・医療体制の不足、極度の貧困にいる約80%がサハラ以南のアフリカにいることなど、十分に恩恵を受けられていない人々がおり、まだまだ課題が山積していたことも明らかになった。また、先述のように「開発途上国」がメインで、先進国が支援するという構造にも難色を示す国があったことも事実だ。

 

こうした格差や課題を反省し、開発途上国だけでなく先進国も含め「『誰一人取り残さない』持続可能で多様性と包摂性のある社会」の実現を国際目標として「持続可能な開発のための2020アジェンダ」の中で宣言したものがSDGsなのだ。

少し複雑に聞こえるが、内容はさほど難しいものではない。端的に言えば、SDGsとは国際的な社会・環境問題や経済成長といった課題を明文化し、各国の達成度が見える形で取り組むことで誰もが幸せに長く暮らせる世界を創ろうとする目標だ。

「SDGs」で目指す17の目標と日本の取り組み

では、具体的にどのような目標が設定されているのかそれぞれ見ていこう。上記は国際連合広報センターが提供しているSDGs・17の目標のアイコン※6である。グローバルデザインとしてピクトグラムを採用し、それぞれイメージしやすいカラーリングになっている。SDGsでは17の目標を大枠に、169のターゲット、232の指標と細分化されていく。内容が多岐にわたるため、ここでは特に関心の高まっている13番と14番の2つについて、日本国内での取り組みを見ていこう。

まず13番「気候変動に具体的な対策を」について。「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」ことを目的に「すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する」など5つのターゲットを設定されている※7。

世界規模でみると、毎年2億人もの人々が自然災害に被災し、その経済的損失は年間平均で1000億ドルを超えるといわれている。自然災害は人々の心身に大きなダメージを与えるだけでなく、建造物や革新的な技術、さらには街にいたるまで一瞬で無にする脅威だ。仮に起こってしまった時に被害を拡大しない、慌てず対処するための万全な対策が喫緊の課題となっている。

そんな中、世界でも有数の自然災害多発国である日本では、東日本大震災をはじめ、九州での大豪雨や関東地方一帯を襲った台風といったさまざまな自然災害を教訓にし、災害に強い国づくりへの政策・取り組みを進めている。

2012年に宮城県で開催された「世界防災閣僚会議 in 東北」では、防災の主流化や気候変動への対応などをテーマに世界各国の外務大臣や防災担当大臣と議論。また、本年2月に開催された「水と文化」国際シンポジウムに中谷真一外務大臣政務官中谷政務官が出席し、水災害の歴史を学び、災害に備える意識を文化として形成する重要性を提唱。日本で開催した「世界津波の日・高校生サミット」も紹介し、世界中の高校生が自国の防災を担う人材になることをアピールした。

14番「海の豊かさを守ろう」では、「持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する」ことを目的に、「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」など10のターゲットが設定されている※7。

海洋保全と言えば、近年ではマイクロプラスチックを含む海洋汚染の問題が議題に挙がることが多い。マイクロプラスチックとは、ビニール袋やペットボトルなどのプラスチック製品が紫外線や波の影響で劣化し、5mm以下になったもの。プラスチックは自然分解されないため、海の生物が誤って飲み込んでしまう危険性があったり、死に至って生態系が壊れてしまったりする。また、食物連鎖によって人間がマイクロプラスチックを摂取してしまう懸念もあるなど早急に解決しなければならない環境問題なのだ。

そうした現状を鑑みて、経済産業省が2020年7月1日よりレジ袋の有料化を開始。プラスチックの過剰な使用抑制し、エコバッグなどの再利用が可能なものを推進することで、こうした環境問題への意識づけ、国民が参加しやすい形で改善を進めていく方針だ。

しかし、レジ袋の有料化に伴うエコバッグの使用促進には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大も懸念されている。エコバッグは基本的には“使い回し”になるため、一度買い物をしてそのままにしていた場合、ウイルスが付着しているかもしれない。それを持ち込み、店側が袋詰めを行って来店客に手渡しをするとなると、その感染リスクは明らかだろう。

そうした不安の声に呼応してか、最近では洗濯が可能なものや、抗菌仕様に仕立てられたものなど、感染リスクを抑えるためのエコバッグが登場してきている。また、コンビニやスーパーなどでは、袋詰めを来店客がするよう協力を仰いだり、購入品が少ない場合は袋詰めせずテープで済ましたりするなど、新しい買い物のあり方が確立しつつあるのだ。

また、大型複合商業施設を展開する「イオンモール」※8や大手コーヒーチェーン「スターバックスコーヒー」※9などでは、従来のプラストローの提供をやめ、環境配慮型の紙ストローなどの提供へと切り替え。戸惑いの声も上がる中、集客力の高さを活かしてサスティナブルな地球環境への取り組みの認知を拡大することに寄与した。

 

このほかにも各地でさまざまな取り組みが行われており、日本企業や自治体、民間が協力しながら17の目標達成を行うために日々努力している。SDGsはエネルギーの管理などを先端技術を用いて行い、持続可能性の高い街づくりを行うスマートシティの考え方に近しいものがある。一人ひとりが社会問題・環境問題を自分ゴト化する動きがさらに拡大すれば、いずれSDGsの達成とスマートシティの双方が実現できる日もそう遠くないのかも知れない。

一人ひとりができるSDGsへの取り組み

今世界は100年先の未来へ向けて変革の時を迎えている。SDGsはそんな変革の火種となり、世界各地のネットワークを導火線として人々の心に地球保全という“意識の火”を灯していく世界規模の取り組みなのだ。

世界規模の取り組みと聞くと身構えてしまうかもしれない。でも安心してほしい、SDGsは私たちの日々の暮らしの中で少しづつ協力できる目標だ。明日から、いや今日からSDGsへの意識を高め、ソーシャルディスタンスを保ちながらマイバッグを持参して買い物に出掛けてはいかがだろうか。

【出典】
※1 タロー!キティです!【ハローキティSDGs応援 Goal 14】|HELLO KITTY / ハローキティ【Sanrio Official】
※2 ピコ太郎 × 外務省(SDGs)~PPAP~|外務省 / MOFA
※3 【SDGs認知度調査 第6回報告】SDGs「聞いたことある」32.9% 過去最高|2030SDGsで変える|朝日新聞デジタル
※4 SDGsとは|外務省
※5 ミレニアム開発目標|公共財団法人 日本ユニセフ協会
※6 SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン|国連広報センター
※7 持続可能な開発目標(SDGs)とターゲット|公共財団法人 日本ユニセフ協会
※8 「プラスチック製ストロー」の提供を終了、脱プラを推進します|プレスリリース |イオンモール株式会社
※9 スターバックス国内店舗で、サステナブルな未来につながるFSC® 認証紙ストローでの提供を開始|プレスリリース|スターバックスコーヒー株式会社

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