新型コロナウイルスの影響により、ワーケーションという言葉が聞かれるようになってきた。これはワーク(仕事)とバケーション(休暇)を掛け合わせた造語で、帰省先や旅先でリモートワークをする働き方を言う。米国で始まったとされ、日本では働き方改革の一環として日本航空が2017年にワーケーションへの取り組みを発表した。元々日本では有給消化率が低く、働き方改革では2020年までに年次有給休暇の取得率70%を目標と定められていたが、実際は2019年度の年次有給休暇取得率は52.4%と目標に及ばない(※1)。
そこでワーケーションを取り入れると、仕事が忙しくても働く場所に捉われず旅行ができたり、普段とは違う環境でリフレッシュしたりできるというわけだ。
政府もワーケーションの普及には力を入れており、観光庁ではワーケーションを「新たな旅のスタイル」促進事業の中に位置付けている。2021年度はこれによって5億400万円の予算を確保、それだけでなく地域の新ビジネス展開支援として1億円の計上もあった(※2)。リモートワークの普及と共に、ワーケーションも注目を集めているとわかる。ここではワーケーションのメリットやデメリットを中心に、具体的な取り入れ方について考えていこう。
働く場所に捉われないワーケーションのメリット
ワーケーションを取り入れるメリットは労働者、企業どちらにもある。まず、労働者側のメリットとして代表的なものがこちらだ。>
・休暇が取りやすくなる
・効率的な仕事ができる
旅行の合間に仕事ができるので、長期間の休暇を取れるのがワーケーションの大きなメリットだ。今までは仕事を調整し、自分の不在期間の対応も考えなくてはいけなかったが、ワーケーションによってフレキシブルに仕事ができるようになった。また、午前中は仕事をして、その後はゆっくりと休暇を楽しむという過ごし方も可能。休暇によるリフレッシュ効果によって、効率よく仕事をこなせるというメリットもある。
企業にとっての大きなメリットはやはり、働き方対策に有効という点だ。社員がより働きやすくなると、離職率の低下や求人の際にメリットとしてアピールもできる。様々な働き方が求められる現代では、企業にとっても無視はできない。
評価基準や設備投資など懸念されるデメリットとは
一方でデメリットはあるだろうか。まず労働者にとってのデメリットとしては休暇を休みきれないという点が挙げられる。これはオフィス外でも仕事ができてしまうが故のデメリットだ。仕事が気になり、休暇中にも関わらず作業ばかりしてしまう人はワーケーションを満喫しにくいかもしれない。オフィス以外の場所で仕事をするリモートワークではなく、休暇を前提としたワーケーションだという点を忘れてはいけない。
企業にとっては、新たな取り組みになるため、評価制度が合わないというケースも出てくる。これは通常のテレワークでも同じ課題だが、数字で評価できる部分とそうではない部分があるため、評価基準を見直す必要性もある。また、通信環境や仕事の環境を整えるための設備投資も必要だ。これは企業側だけではなく、環境庁が指揮をとりワーケーション受け入れ地域に対し投資をしているため今後多くの地域で改善されるだろう。
ワークライフバランス社会の実現へ
ワーケーションを取り入れると、今まで以上に仕事とプライベートのバランスが取りやすくなる。コロナ禍が後押しする形になったが、充実した生活のためにも欠かせない休暇の過ごし方としてワーケーションの浸透が期待される。
【出典】
※1 厚生労働省「年次有給取得促進特設サイト」
※2 令和3年度 観光庁関連予算決定概要
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