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働く人がテレワークをしていくことで、どんなデメリットが生まれるのか?

2020.05.21

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、今、世界が混乱に陥っている。ウイルスの拡散防止に、ロックダウンや入国禁止など、各国様々な対応が必要だ。日本においては、政府が緊急事態宣言を2020年4月7日に東京など7都府県に出し、4月16日に全国へ対象を広げた。また2020年4月10日に発表された厚生労働大臣からの要請書にもある通り、ウイルスの拡散防止の対策として、テレワークや時差出勤の活用を促進していく必要がある。では、テレワークを実装することで、起こるデメリットはないのだろうか。

今後、テレワークが当たり前になるかもしれない。その際、テクノロジーを活用していくことでより豊かな生活を送れるようになる。では、テレワークに変わっていくことで起こる問題はないのだろうか。本記事では、現状を踏まえながらテレワークの未来について考察していく。

テレワークの普及が進む現代

日本経済団体連合会(経団連)の「新型コロナウイルス感染症拡大防止対策 各社の対応に関するフォローアップ調査」では「Q1 貴社では新型コロナウイルス感染症への対応として、テレワーク/在宅勤務を推奨していますか(従来から推奨している場合も含む)回答 398社」に対して、「実施している、実施予定」と答えた企業が68.6%、「検討中」と答えた企業が19.3%という結果がでた。「実施している、実施予定」と「検討中」合わせて87.9%の企業がテレワークに対して前向きな反応を示している。

もちろん、全ての仕事がテレワークにできるわけではない。可能な限り人の密集を避けるためにも、テレワークできる仕事では、自宅勤務の検討を進めるとよいだろう。

人間はどのように暮らすことが大事なのか?

テレワークの大きなメリットとしては、通勤時間が無くなることが挙げられる。総務省の「平成28年社会生活基本調査」では、一日の平均通勤時間は往復1時間19分とされている。年間休日総数の一企業平均は107.9日のため、そこから通勤日数を割り出すと、1年間で約340時間以上を通勤で使用していることがわかる。単純に1年で約340時間を自由に使えるようになる計算だ。

しかし、テレワークはいいことばかりではない。会社や個人としてのデメリットがそれぞれ存在している。会社としては、まずテレワーク導入のためのセキュリティやソフト、PC本体などの準備が必要になることや、プライベート空間で仕事をすることでの気のゆるみ、労働の様子を直接確認できないことなどが挙げられる。個人としては、外出しないことによる運動不足や、コミュニケーション不足による気分の落ち込みなど、特に生活リズムの乱れは重要な問題といえる。

では、なぜテレワークをすることで人の生活リズムは崩れてしまうのか。考えられる原因としては、同じ場所で生活と仕事を行うことで、オンオフの切り替えがうまくいかず、就業時間後も作業をしてしまい、緊張状態が続くことで睡眠時間が短くなって……。といったような状況だろうか。また、外に出ない生活が続き太陽の光を浴びないでいると、体内時計が狂ってしまう。生活リズムが崩れると人間には、思考力の低下、常に眠気がある、食欲不振、生活習慣病のリスクが上がる、憂鬱な気分に(うつ病)、といったような影響が出始める。近年ではコロナ鬱という言葉が出来るほどテレワークなどで起こる外出不可状態に対する影響は話題となっている。

そのような状態では、仕事で高いパフォーマンスを発揮することができなくなるだろう。コロナ鬱の対策として、日本うつ病学会「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行下におけるこころの健康維持のコツ」では
・自宅待機や在宅勤務であっても、自分自身で毎日決まって行う日課を設定する
・毎日、同じ時刻に起きる、食事する、運動する
・電話やメッセージなどで交流する

など、外出不可状態のコロナ鬱への対策が書かれており、これらはテレワークに対しても活用できることだといえる。最大限の対策を行なった上で、テレワークのスタイル自体が今後より快適になっていくと一層テレワークという働き方の良さが活かせるようになる。

テクノロジーを活用した「未来型テレワーク」予想

そういった背景を踏まえ、これから先の未来、テレワークはどのように変化していくのだろうか。今後、今あるソリューションを組み合わせた、テレワークのデメリットを解消できるサービスの出現が予測される。

1. VRやホログラムを利用して視覚的には家と「別の場所」で仕事をする
テレビ会議が普及してきており、NTTデータが開発を進めている「VR遠隔会議」システムや、株式会社Synamonが開発している複数人が同じVR空間に入って会議ができる「NEUTRANS BIZ」など、VRを使った「VR会議」というサービスが色々出現してきている。生活リズムの乱れの原因として、同じ場所で生活・仕事を行ってしまうことで、オンオフの切り替えがつきにくくなる。VRやホログラムの技術を使用して、テレワークでありながら、仮想の空間の会議室やオフィスでの仕事をすることで、プライベートと明確な区別を付け、生活リズムの崩れを防ぐ。また、この場合、テレワークのデメリットでもある「人との関わりが薄くなりコミュニケーション不足に陥る」といった問題点も、視覚的にオフィスで一緒に働いている状態と変わらないようになれば、解決が見込まれる。

2. スマート○○×AIで健康管理
通常、出勤して仕事をしていると、朝の通勤・ランチ・同僚のもとへ資料を届けに……と、多少なりとも動く機会があるはずだ。だが、在宅で仕事をしている場合は、座ったままになりがち。そんなデメリットを解決するサービスとして以下のようなサービスの出現が予想される。AIの技術でユーザーの生活パターンに合った動きを、時間ごとに提案することで極度の運動不足を防ぎ、出勤しているときと変わらぬメリハリを持った生活を送らせ、生活を整える。また、スマートウォッチやスマートスピーカーでユーザーの脈や体の動き、体温を感知。AIと連動させ、適切な睡眠時間・起床時間や近日の栄養状態を考慮したその日のランチメニューのレシピの提案を受けることができる。

3. 業務の見える化でダラダラ仕事を避け、無駄な残業を減らして正しい生活リズムを
JC360やChatworkなどの業務管理ツールで誰がいつどの仕事をしているか、すぐに分かる環境に。その日のやるべきスケジュールが予定通り進んでいない場合、AIが自動的に他の社員の状況を判断。適切な人へ仕事を再分配する。この仕組みで無駄な残業をなくし、業務時間外の業務を極力減らすことで、正しい生活リズムを守る。AIが、社員の得意・不得意も判断し仕事を振り分けることで、社内全体の生産製・仕事の質も向上。従来であれば、管理者・役職者が行っていたような仕事の分配を自動で行ってくれることで、管理側の工数も削減でき、実作業へと取り組める時間が増えていく。

このようなサービスが出現することで、「未来型テレワーク」はより良いものへと変化していくだろう。

テレワークの発展で人々の働き方が変わっていく

以上のように、テクノロジーの発展によって、テレワークのデメリットが解消されていけば、テレワークが未来の一般的な働き方となっていく可能性は大きい。新型コロナウイルスの影響で普及が進んでおり、図らずも導入の前例が出来た会社は多々あることだろう。働き方改革が叫ばれる現在、人々の働き方についても考えていく必要がある。未来の都市に住む人々が、より良く豊かな生活を送れるよう、今後もテクノロジーの発展に期待が高まる。

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